組織の中で働きやすい環境を作り出す為に必要不可欠な要素が、その組織での「自分の存在価値を高める」ということです。
もしも昇進・昇給を望んでいるのであればもちろん組織への価値提供が必要となりますが、それだけではなく組織の中で円滑なコミュニケーションを実現する為にも、自分はどんな価値を組織に提供できているのかを考え認識し行動することが大切です。
でも、具体的に「存在価値」とは何を意味するのでしょうか。
この記事では、実際に100人以上面接・採用をしてきた筆者が、組織に必要とされ転職を成功させるうえで非常に大切な「存在価値」という点について、具体的に何をすればあなたの「存在価値」が上がるのかを解説しています。
「仕事ができる人」の存在価値は?
会社組織を運営する中で最も重要なこと、それは利益を追求することです。
仕事をバリバリこなす人は会社の利益に貢献しているので、経済的な価値の提供をしていることになります。
では「存在価値」についてはどうでしょうか。
もちろん会社の売り上げをあげているので、それだけで価値のある存在ということができますよね。
ただし、仕事はバリバリこなしてどれだけ売り上げを上げていたとしても、いつもピリピリした空気を醸し出すような人物だったとしたらどうでしょうか。
それだけ仕事ができる人であれば、本当はみんなその人から仕事のやり方を教えてもらえれば、全体ではもっと売り上げを伸ばすことができるはずです。
しかし、いつもイライラしていたり、話しかけても面倒臭そうに対応していては、誰もその人と一緒に仕事をしたいとは思わないでしょう。
場合によってはその人と同程度に仕事のデキる人や同じチームで働いている人が辞めていってしまうかもしれません。
それでも組織の経営者は利益を上げることが最大の目的である以上、残念なことに売り上げが下がることを恐れてその人に真っ当に注意できる人はなかなかいないのが現実だったりします。
組織で仕事をしている以上それはチームプレーであり、一人が経済的な価値を創造することに長けていたとしても、誰もその人と仕事をしたいと思わなければ試合は成り立ちません。
試合が成り立たないということは当然売り上げの減少にも繋がり、結果的に提供した価値とマイナス方向の価値が相殺され、その人の組織での価値はなくなってしまいます。
組織で戦うということはもちろん「チームプレー」です。
「仕事ができる人」はもちろん組織に価値を提供している大切な存在ですが、チームメイトに自分のやり方を丁寧にレクチャーしたり、仕事ができる分余裕を持ってチーム全体の底上げを測るようなチームプレーをすることによって、その人の「存在価値」は何倍にも膨れ上がるのです。
入社初日から組織に提供できる価値もある
組織の中で提供できる価値というのは、入社歴とは関係がありません。
例えば、これまで殺伐としていた職場に新入社員が入社したとします。
その新入社員が出社するなり「おはようございます!」と元気に挨拶をしたらどうでしょうか。
初めはきっと「なんか変なのが入ってきたな」位に思われるかもしれません。
それでもその翌日も翌々日も、毎日とびっきりの笑顔で元気よく挨拶をし続けたらどうなるでしょうか。
今まで殺伐としていた職場にその新入社員が毎朝出社するだけで職場の雰囲気が明るくなるのではないでしょうか。
職場の雰囲気が明るくなれば当然イライラしている時よりも全体のコミュニケーションが活発になり、取り組む姿勢も変わり組織全体の生産性も上がります。
「元気に挨拶をする」という誰もが幼い時にはできたことを実践するだけで、その人がいるだけで職場の雰囲気がよくなるというとてつもなく大きな価値を提供することができるのです。
それこそが「存在価値」であり、その人が存在すること自体に価値がうまれ、いつの間にかその組織になくてはならない存在になるのです。
- 仕事ができることも「価値」
- 職場の雰囲気をよくすることができるのも「価値」
自分の価値を高めることができればいつしか「存在」自体に価値が生まれ、提供した「価値」の分だけその分当然自分の報酬も上がっていくのです。
自分が組織にどんな存在価値を提供できるのか、簡単なことから考えて実践してみませんか?
存在価値はプラスにもマイナスにもなる
- あの人がその仕事をやるなら一緒にやりたい
- あの人がその仕事をやるなら私はやりたくない
あなたはどっちの「あの人」でしょうか。
前者はプラスの存在価値を提供している人で、後者はマイナスの存在価値を提供している人です。
では、プラスの存在価値を高めるにはどうすれば良いのでしょうか。
答えは「魅力的な人」になることです。
例えば税理士事務所で言えば、仕事で行き詰っている時に「何か手伝えることはありませんか?」と声をかけたり、自分の持っている知識を分け与えることです。
つまり、自分の能力を高めることによって、それを他者へ分け与えることができるようになるのです。
何事もバランスが大切で、仕事では「ただの良い人」であってはいけません。
「仕事も出来る良い人」になることができれば、どんな職場に行っても必ず必要とされ、職場環境を明るくすることができ、結果として昇給もすることでしょう。
組織に属して仕事をする以上、一人ではこの仕事は成り立ちません。
職場の人々への尊敬の念を忘れずに、己の能力を磨きつつ、魅力を身に付けることが出来れば、経済的にも精神的にも素晴らしい職場を創造することができるのです。
存在価値の提供方法は人それぞれ
組織にどんな価値を提供できるのかは、人それぞれみんな違います。
税理士事務所の場合、有資格者の人数を揃えたい事務所にとっては税理士資格のある人はそれだけで存在価値を提供できます。
しかしまだ経験の浅い新人の場合でも、挨拶や返事の仕方、支持を受ける態度等、いくらでも自分で価値を作り出すことはできるのです。(当然未経験では就職するまでの入り口は狭くはなりますが)
部下のいる人は、仕事の振り方や部下にやってもらった仕事に対して「ありがとう」と声をかけることに価値があります。
また、自分の部下が何かミスをした時に「彼のミスは私の指示不足が原因です」と、部下の責任を自分で取れる人にはものすごく価値があり、その存在価値は「人望」へと変化していきます。
役員であろうと正社員であろうと、パートであろうとバイトであろうと、ベテランであろうと新入社員であろうと、どんな立場であっても自ら価値を作り出し組織へその価値を提供することはできるのです。
もちろん大前提として、税理士事務所であれば「税務」の能力を高めることによって作り出す価値は必須ですが、それ以外にも人としての価値(魅力)を高めることで、いつしか組織になくてはならない存在となり、その人の「存在価値」が認められるようになるのです。
「私はまだまだ実務能力は劣っているから組織に何も価値提供できない」なんて思っている人がいたとしたら、それは非常にもったいないことです。
地位も経験も関係なく「他者の為に自分は何ができるか」を考え実行すれば、どんな人でも他者に喜ばれ、自分の価値を高め、その組織にとって必要な存在となることができるのです。
自分の価値提供が「偽善だ」と言われても気にしないこと
現実社会には、どんなに思いやりを持って接しても難癖をつけてくる人が存在します。
「あいつは上に気に入られたくてやってるだけだろ」
などと言う人が必ず現れますが、それは仕方のないことです。
何故なら世の中には実際に、自分の利害関係者にしか思いやりを持った行動をしない人があまりに多く存在するからです。
もしもあなたが組織を統括するに相応しい人物になりたいのであれば、目上の人だけではなく真下の人にも分け隔てなく思いやりを持って自分の価値を提供してください。
そうすれば次第に外野はいなくなります。
「それでもどうしても外野が気になってしょうがない」そんな時は、最後に載せたマザーテレサの言葉を思い出して気にせず自分の存在価値を上げ続けてください。
存在価値を上げ続ければ、たとえその環境では無理だとしても、将来あなたが転職等で環境を変えた途端に全てが良い方向へと動き始めるはずです。
人間的に他者を思いやる深みのない人は、深みのある人には敵わないと直感でわかります。
それこそがどこにいっても成功する人のオーラなのです。
人は不合理、非論理、利己的です
気にすることなく、人を愛しなさい
あなたが善を行うと、
利己的な目的でそれをしたと言われるでしょう
気にすることなく、善を行いなさい
目的を達しようとするとき、
邪魔立てする人に出会うでしょう
気にすることなく、やり遂げなさい
善い行いをしても、おそらく
次の日には忘れられるでしょう
気にすることなく、し続けなさい
あなたの正直さと誠実さとが、
あなたを傷つけるでしょう
気にすることなく正直で、誠実であり続けなさい
あなたが作り上げたものが、
壊されるでしょう
気にすることなく、作り続けなさい
助けた相手から、
恩知らずの仕打ちを
受けるでしょう
気にすることなく、助け続けなさい
あなたの最良のものを、
世に与えなさい
けり返されるかもしれません
でも、気にすることなく、
最良のものを与え続けなさい
『最後に振り返ると、あなたにもわかるはず、結局は、全てあなたと内なる神との間のことなのです。あなたと他の人の間のことであったことは一度もなかったのです。』
マザー・テレサ
まとめ
小学館のデジタル大辞泉では「存在価値」の意味は次のように説明されています。
その存在を意義あるものとして認めるような、人や物事のもつ価値。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
とても抽象的で定義が曖昧な言葉ですが、「存在価値がある」とは端的に言うと、
「価値を持った人や物事がその存在を意義のある者(モノ)として認識されている状態」
と言うことができると思います。
では「価値を持つ」とはどう言うことでしょうか。
「価値」が他者に対して有益な事・モノであるならば、他者を思いやる気持ちにこそ価値が宿るのだと思います。
価値は何もない状態からでも作り出すことができます。
組織で働いている以上、社内外問わず常に他者への思いやりを持って行動することで、自分も周りも働きやすい環境を整え、生産効率が上がり、売り上げが上がり、分配される報酬が上がるのです。
今後10年以内に無くなる仕事に会計業界の多くの仕事もノミネートされています。
記帳代行や申告書作成の多くがAIに取って代わられるとの予測がされています。
おそらくこの予測は現実となり、会計業界のあり方も現在とは大きく異なるものへと進化するでしょう。
しかし、形は変わっても業界全てが無くなるわけではありません。
かつて洗濯機の発明によってクリーニング屋が無くなると騒がれた時代があったそうですが、現在でもクリーニング屋はなくなっておりません。
形は違えど、AIによって無くなる仕事があれば新たに作られる仕事もあるのです。
その時の業界のカタチはどのようになっているのかわかりませんが、状況がどのようになっていたとしても「他者を思いやる」人には常にどの時代でも大きな価値が生まれるものです。
- あなたと一緒に働きたい
- あなたに仕事を依頼したい
そう言ってもらえるような「存在価値」を身につけることが出来たなら、昇進・昇給はもちろん、上司にも部下にも味方しかいない素晴らしい環境を作ることができるかもしれません。