就職活動・転職活動では、まず相手(税理士事務所等)がどんな人材を求めているかという事をよく知る必要があります。
会社で採用活動をしていた時によく見たタイプの一つに、自分の事をよく見せることばかりに意識が集中していて「うちの会社のこと全然知らないじゃん!」という求職者がいましたが、やはりそういう方の採用は受ける会社のことをよく調べている方と比べると圧倒的に少なかったです。。
この記事では、税理士事務所が
- どのような人材を求めているのか
- どのような人材を採用するのか
について、過去100人以上の採用活動を行ってきた私まーさんが実体験を基に解説します。
孫子に学ぶ就活の考え方
彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず
彼を知らずして己を知れば、一勝一敗す
彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず殆し
孫子の兵法
まーさんが面接をしていた時には、多くの方が自分のことを良く見せようと履歴書や職務経歴書を必死で書いてきますが、受ける会社についてはよく調べていない方がほとんどでした。
孫子の言葉を借りるならばこういう状態です。
彼を知らずして己を知れば、一勝一敗す
つまり受かる確率はフィフティーフィフティーということです。
履歴書も職務経歴書も適当に書いている方はもちろん論外ですが、大体は皆さん自分の経歴を元に自己アピールばかりするのです。
もちろんアピールする場ですからそれは否定しませんが、自分の希望する職場がどんな所なのか、どういった企業理念があるか等についてよく理解した上でのアピールをする必要があります。
相手がどんな会社か、どんな人材を求めているのか、自分と企業理念の共通点はあるか等、よくその会社を調査してから面接に臨めば、それら調査した事柄を絡めた自己アピールになるので合格率は格段跳ね上がります。
彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず
さすがに100戦100勝はないにしても、相手をよく知る事で相手によってより良い戦略を立てる事ができます。
今はインターネットがありますので、HPや会社のブログ等で受ける会社をよく研究するようにしましょう。
相手(受けたい会社)を知る方法
相手(受ける会社)がどんな理念を持っているのか、どんな人材を欲しているのかは、HPと会社のブログ(SNS)があれば大体わかります。
きちんと調査しているか否かは、何故かわかりませんがなんとなく書類からも面接での雰囲気からも伝わるものです。
自分が入りたい会社・事務所であれば、事前にきちんと調べてから履歴書を書いたり面接を受けるようにしましょう。
HPではココをチェック
今はほとんどの会社にHPがありますが、もしあなたに時間があるなら受ける会社のHPは全てのページを見ておく事が1番望ましいでしょう。
どんな分野(税目)に特化しているのか
創業はいつか
代表税理士の出身はどこか
従業員の人数
どんなサービスを提供しているか
企業理念はあるか
希望する会社によってはHPに膨大な数のページがあって全てに目を通す事が難しいものもありますが、上記の項目位は見ておくようにしましょう。
特に自分のやりたい分野の仕事ができるかどうか、特化している分野はあるかどうかについてはきちんと確認するようにしておきましょう。
ブログ(またはSNS)ではココをチェック
最近は税理士事務所の代表や職員がブログを書いているところもかなり多くなってきました。
ブログには代表の思いや考え方、車内イベントの様子などが書かれていることが多く、HPよりももっと具体的に社内の様子を伺うことができます。
代表税理士がどんな本を読んでいるか
企業理念に込めた思い
具体的にどんな人材を募集しているのか
社内イベントの様子
閑散期と繁忙期のブログ更新頻度の差
面接では求職者が会社の理念にマッチした人物かどうかを見ることがよくありますが、そもそも企業理念を作成した代表税理士等がどのような思いでその理念を掲げたのかを知ることが大切です。
また、起業家(税理士事務所で言えば代表税理士)は本をたくさん読む人が多いので、今までどのような本が読まれているのかをブログから知り、実際に読んでみるかその本の書評位は見ておくようにしましょう。
もし面接をするのがそのブログを書いている人であれば、これらの対策をしておけば話を合わせることもできるでしょうし、仮にブログを書いている代表税理士が面接をしなかったとしても、面接をする人は大抵企業理念を理解しているので、面接を受ける側も同じ様に企業理念に沿った自己アピールをすることで良い印象を与えることができます。
更に、ブログではHPの内容よりもフランクに書かれていることが多く、写真などが載っていることもよくありますので、社内イベントの様子や、普段の執務スペースの様子などを知ることも出来るかもしれません。
得た情報は履歴書・面接にフル活用
これらの情報を入手したら、早速履歴書や職務経歴書の自己アピール欄に活かしましょう。
アピールするのはもちろん自分のことですが、HPやブログから得た情報をもとにそれらに絡めたアピール文を考えます。
例えば自分の体験と企業理念に通づる部分があれば、それをリンクさせて「会社の理念を普段から実行している人物」であることをアピールします。
ただし、あからさまにコピペしたような文章だと「この人はどこを受ける時も同じようなことしてるんだろうな」と思われてかえってマイナスになってしまうこともあるので注意が必要です。
あくまでさりげなく、しかししっかりと伝わるような文章を考えましょう。
やっぱり経験者は転職に有利なの!?
一般的に経験者を欲している税理士事務所は多いのですが、業界経験者なら誰でも有利かといえばそうではありません。
基本的にはどの事務所も会社に利益を残すことが最大の目的ですので、即戦力になる優秀な人材をできるだけ安く手に入れたいと思っています。
経験者と未経験者では確かに経験者の方が大きく門が開かれていますが、勤続年数に応じて求められる経験やスキルも上がっていきます。
経験年数がいくら長くても、それに見合った業務を行っていなければ逆に「経験者」であるが故に転職活動はうまくいかないこともあるでしょう。
一概にどっちが有利かという問題は、まーさんが面接官なら違った見方をすると思いますが、一般的にはやはり未経験者よりも経験者の方が断然有利な事が多いのは事実です。
入社後はもちろん自分の頑張り次第ですが、入口は経験者に有利になっています。
とはいえ、税理士事務所に求められる人材は、その事務所の資金力や教育に関する考え方・タイミングによって異なります。
求人募集のタイミングによって求める人材は様々
教育環境・求人の積極性について、大雑把に表にまとめるとこんなイメージです。
求人募集に積極的 | 求人募集に消極的 | |
教育環境が 整っている |
A | B |
教育環境が 整っていない |
C | D |
事務所A・・・一番良い状態です。求人広告に多額のお金を使っているので様々な求人サイトで募集を見つけることができ、教育環境も整っているので経験者はもちろん、未経験でも受け入れてもらいやすい状態ですがライバルは多くなります。
事務所B・・・教育環境は整っていますが、求人広告にお金をかけないため、なかなか募集自体を見つけることが難しいでしょう。未経験者でも受け入れることは十分ありますし、経験者にとってはもちろんさらに有利な状態です。Aに比べるとライバルが少ないのが特徴です。
事務所C・・・様々な求人サイトで見つけることができます。この事務所は優秀な経験者の転職には有利ですが、経験が浅かったり未経験者はあまり取らない事務所です。
事務所D・・・ほとんどの場合未経験者は募集すらしていませんし、経験者の募集も「本当にいい人がいたら取ろうかな」位の感覚です。
この中で未経験者が狙うべき事務所は、当然教育環境の整っているA・Bの事務所です。
会計業界は自分の頑張りと良い事務所への巡り合わせ次第で数年で年収大幅アップが狙えます。
経験者の転職はA・Cが入りやすいですが、自分の経験値と実力次第でB・Dも含め全ての事務所を狙う事ができます。
では、自分の受けたい税理士事務所がA〜Dのどの状態にあるのかどうやって判断したら良いのでしょうか。
まず大きな手がかりとして、HPとブログがあります。
求人募集に力を入れている事務所はHPに凝った求人専用サイトのリンク等を作成していたりするのですぐにわかります。
また、ブログでは具体的にどんな人が欲しいとか、うちはこんな会社ですといった、HPとは違うよりリアルな会社案内が乗っていることもよくあります。
ブログの中で、「未経験者」について好意的に触れいてるような事務所であれば、教育環境も整っている事が多いでしょう。
次に求人サイトです。
HPやブログで求人募集に関する記事を作成せずに、求人サイトのみで求人を行う事務所も当然あります。
ただしこの場合は注意が必要です。
例えば、あなたの希望条件に合致している求人募集を行っっている「まーさん事務所」という税理士事務所があったとします。
この時「まーさん事務所」が求人広告を掲載していたのはAサイト、あなたが見ていたのはBサイトだとすると、あなたはA事務所の求人募集の事実を知ることはなく、他の誰かがA事務所の面接を受けて入社することになってしまいます。
せっかくのチャンスに気がつけず、せっかくのチャンスを失ってしまうことになるのです。
こうならない為に、就職・転職をお考えの際は求人サイトは複数チェックしておくようにしましょう。
そして募集要項やHP・ブログ等をよく見て調査し、未経験者に有利な事務所・経験者に有利な事務所を見定め、自分にあった最高の職場環境を見つけられるようにしましょう。
「経験者」=「求められる人材」ではない
どこの事務所でも即戦力となる人材確保には前向きな事が多いのは事実です。
しかし、だからと言って「経験者」なら誰でもいいのかというと、そういうわけではありません。
実務経験が長ければ長いほど、その間にどのような内容の仕事をしてしてきたのか、どのようなポジションで仕事をしていたのかが重要になります。
正直、バリバリ実務ができる人材は、教育環境の整った事務所であればそれほど時間をかけずに育てる事ができます。
ところが検算要員や管理(チームリーダー、マネージャー)職となると、ただただ経験を積んだだけではなく、経験・知識・正確性・マネジメント能力も求められる業務になり、適性が有るか無いかが問題になってくるので、教育だけではどうすることもできません。
「経験者」が有利に働く場合というのはこうした業務を行っていた場合であって、入力作業だけを何年もこなしていたような人は逆に「使えない人材だったんだな」と捉えられてしまうこともあります。
また、経験者である程度の給料をもらっていた人であればある程、採用する事務所側からするとギャンブル的な要素は強くなりますので、採用にはより慎重になるケースがほとんどです。
高い金額を提示して入社してもらっても、実際に実務能力が伴っていなければ事務所としては失敗採用になります。
一度提示してしまった賃金を下げることはよっぽどのことでない限り難しいので、そのような経験を持っている人に対しては「最初はこの程度の賃金だけど、入所後期待通りの仕事振りだったら適性な賃金に昇給させるね」等と交渉する事務所も多いのです。
もし税理士事務所での転職を考えているのであれば、まずは今いる事務所で教育職に着くとか検算をするとか、勤続年数に見合った業務以上の業務が出来る様に自らの能力を高めることに専念し、広く情報を収集した方がより有利に転職活動を進める事ができます。
喉から手が出るほど欲しい人材
経験者・未経験者にかかわらず、喉から手が出るほど欲しい人材、という方が存在します。
それは「この人と一緒に働きたいな」と思わせる人材です。
言葉で言い表すのは難しいのですが、その人が放つ謙虚な姿勢であったり、爽やかでその人が入ることによって職場の雰囲気が良くなるような、そんな空気を持っている人です。
もちろんそれにプラスしてスキル・経験がある事が絶対条件です。
申告書類の検算をしていた
会計事務所経験が5年以上ある
落ち着いている
爽やかでニコやか
話がスムーズにできる
謙虚
採用面接を受ける事務所で使用しているソフトを使用した事がある
やっぱり言葉で言い表すことは難しいのですが、これらの項目に合致するような方はどこの事務所でも誰もが欲しがる人材であり、むしろ受ける事務所同士で取り合いになるような人材です。
自分が税理士事務所を運営しているとしたらどんな人材が欲しいでしょうか。
その時の状況に応じて求める人材は異なるでしょうが、根本的に「こんな人と一緒に働きたいな」という人物像は変わらないのではないでしょうか。
使える知識が豊富で謙虚だけれどもしっかりとした芯を持ち、人望があってその人がいると会社が明るくなる
そんな人物が「あなたの事務所で一緒に働きたいです」と言ってきたらどうしますか?
もちろん「喜んで!是非いらして下さい!」と思うのではないでしょうか。
では、今現在あなたご自身はその理想とする人物像に慣れていますか?
未経験者が今すぐに経験を手に入れることはできないとしても、謙虚さや爽やかな話し方、表情などは少しの心がけと練習で手に入れる事ができるのではないでしょうか。
応募する側も採用する側も、結局は人と人とのことです。
人間的に魅力のある人は、別に税理士事務所でなくてもどこでも通用するのです。
魅力的な人とはどんな人なのか想像して、その理想的な人物に近づけるようにしてみましょう。
※履歴書の写真は超重要!
書類審査では、履歴書・職務経歴書ばかりに力を入れている方が多いのですが、履歴書の写真は本当に本当に大切です。
自分が求人募集をしている立場だったとしたら、送られてきた履歴書の封筒を開けたらまず書類のどの部分が目に入るでしょうか。
もし想像が難しければ、実際に履歴書を封筒に入れてから取り出して見てみてください。
パッと見でまず目がいくのは写真です。
ある研究によると、人間には写真を見た最初の数秒でその人の人柄や能力を当てる能力があるそうです。
つまり、無意識のうちにこの人に会いたいかどうかが判断されているのです。
もちろんその後に履歴書や職務経歴書にも目を通しますが、最初に目から入った写真のイメージはまず変わりません。
内容よりも外見で判断されるのかと、悲観的に思う方もいるかもしれませんが、これは人間にもともと備わった特性ですのでどうしようもありません。
では具体的にどんな写真がいいのかというと、男性であれば短髪で爽やかな印象を与える写真、女性であれば若干の和やかさが伝わる写真です。
ネクタイはキチッと閉まっているか、ジャケットは左右対称に見えるか等、衣服の着こなしだけでもかなり印象が違ってきます。
もちろん画質が悪いとそれだけでマイナスの印象を与えることになるので、スマホで撮影して家のプリンターで印刷した写真は極力避けたいものです。
封筒から履歴書を取り出して数秒で面接するかどうかはほぼ決まってくるものだという意識を持って、履歴書を受け取った側の気持ちになって写真を選ぶようにしましょう。
まとめ
税理士事務所が欲しい人材とは極論で言ってしまえば、即戦力になり謙虚で魅力的な人です。
全てが揃っていればベストですが、そんな人はまずいません。
面接官によってももちろん意見は割れますし、人的に「合う」「合わない」もあります。
いくら職務経歴書に立派な事が書いてあっても、面接での印象が良くても、その人が即戦力になるかならないかは実際に一緒に仕事をしてみないとわかりません。
そうすると重要になってくるのは、人として魅力があるかないかという事が重要な要素となります。
これは綺麗事ではなく、まーさんも他の面接官も重要視していた事です。
また、入りたい事務所に入れるかどうかは、採用する側のタイミングに大きく左右されますので、常に広く情報を収集しておくことも必要です。
これを怠ってしまうと、せっかくのチャンスに気が付けず、機会損失を生んでしまいます。
そんなところで損をしない為にも、就職・転職を考え始めたその瞬間から情報収集を始めましょう。
あなたの市場価値を確かめるという意味でも良い機会になると思います。
最後に、採用する側も人間です。
「この人と一緒に働きたい」と思う人もいれば、「この人とは一緒に働きたくない」と思う人もいます。
魅力的な人になれるように、研究して実践してみましょう。